宝塚ファン歴が数年であっても、「二番手羽根を背負って、トップにならなかったジェンヌさん」と聞いて、思い浮かべる名前があるのではないでしょうか。
ここ数年で言うと、二番手(目)上級生としてトップスターを支えてきた美弥るりかさん、瀬戸かずやさん、愛月ひかるさんの三名です。
二番手羽根を背負ってトップスターにならないという現象が久しぶりだった美弥さんの退団については、月組ファンとしては胸の痛むような言葉がSNSのあちらこちらで飛び交っていたのを今でも覚えています。あのときの暴言は本当にひどくて、暫くSNSは見なかったです。
美弥さんが退団されてから、インタビューにて、彼女の考え方や意志を聞ける機会があり、「二番手切り」という言葉は相応しくなかったこと、美弥るりかさんに対してその言葉を使うのは失礼に当たると思い直したファンの方々も多かったように思います。
そして、美弥さんの前例に倣うかのように、柚香さんを支えた瀬戸さんと、礼さんを支えた愛月さんが二番手羽根を背負って退団されました。
瀬戸さんや愛月さんは、美弥さんの前例があるために、トップにはならないと予測していた人も多かったと思います。
だけど、トップにはならなくても、大きな二番手羽根を背負う二人の姿が嬉しかった人も多かったと思います。
徹底的に男役の美学を表現し続けた瀬戸さん。宝塚が大好きで、専科に行っても組替えしてもなお、宝塚への愛が根強かった愛月さん。ふたりの、誰しもが尊敬できる立ち振る舞いは、柚香さんを、礼さんを、そしてたくさんの下級生たちを励まし続けました。
頑張ったら、努力したら、こんなに素敵な男役になれる。お手本のように素晴らしかった彼女たちの輝きは、ファンだけでなく、各生徒の心にも深く刻まれたと思います。
トップスターになるにしろ、ならないにしろ、トップスターの隣に立つ男役というのはそれだけで注目されます。
格好良さを見つけてもらえると同時に、粗も探されます。称賛と同じくらい、批判だってつきまといます。
そんな中で、トップスターを支えるという役割を、彼女たちは全うします。
水美さんが前回(『元禄バロックロック』及び『The Fascination!』)公演にて、二番手羽根を背負いませんでした。「スポンサーの関係」や「トップスターが同期だから」など、憶測が飛び交う事態になりました。
過去に遡れば、二番手羽根を絶対に背負わせてもらえなかったジェンヌさんたちがいます。
どれだけ注目されても、恍惚とされても、批判されても、何が何でも、背負わせてもらえなかったのです。
ですが、彼女たちも、トップスターをしっかり支える役割を全うすることに変わりはありませんでした。
それならば、羽根を、背負わせてあげたいじゃないですか。
トップスターになるにしろ、ならないにしろ、今までの努力がこの大きな羽根になったとばかりに、大きな大きな羽根を、背負わせてあげたいじゃないですか。
なぜこの記事を今書いたのかと言えば、土曜日が星組公演『めぐり会いは再び』及び『Gran Cantante!!』の初日だからです。
星組には、暁さんが組替えでやって来ます。花組に永久輝さんがやって来たように、トップスター候補としてやって来ます。
次のトップスターは彼女たちである可能性が非常に高いことはたくさんの人が勘づいています。けれど、だからと言って、瀬央さんと水美さんに二番手羽根を背負わせないというのは、あまりに悲しいです。(二人がこれから専科等で活動するなら話は別ですが、その兆候も見られないので)
特に、礼さんがトップスターになってから、星組の別箱は、轟さんか愛月さんか瀬央さん主演で、若手に主演のチャンスが回ってきませんでした。
その結果、スカステで放送される稽古場風景では、礼さんと舞空さんと瀬央さんの三人しか映っていません。
そのことに、もやもやしている星組の若手ファンもいると思います。そういうヘイトも背負って、瀬央さんは舞台に立ちます。
大きな羽根を背負うことが全てではありません。ただ、花組 100周年のパレードの際、二番手羽根がなかったことはあまりに寂しかったです。
また、前回の花組大劇場公演では、永久輝さんに対しての悲しい言葉も見受けられました。暁さんに対しても、これから先悲しい言葉が見受けられるかもしれません。
同期のトップスターということで、抽香さんや礼さんに、その言葉が向けられることもあります。ジェンヌさんたちはなにひとつ悪くないのに、批判の的になってしまいます。
わたしは、水美さんも瀬央さんも、二番手という大きな羽根に相応しい、素晴らしいジェンヌさんだと思っています。男役として切磋琢磨し、努力という文字が良く似合い、その素敵な人柄で、舞台に出る組子を支える力を持っている。
たしかに、トップスターにはなれないかもしれない。けれど、大きな羽根を背負うには十二分に相応しい方々だと思います。
彼女たちは羽根にこだわりがないかもしれません。なので、これはもしかしたらファンのエゴなのかもしれません。
しかし、人生の大部分を宝塚に捧げてきた彼女たちに、どうかあたたかな配慮があるよう、願わずにはいられません。
美弥さん、瀬戸さん、愛月さんの大きな羽根を背負った写真を、わたしは何度も見返し、何度も笑顔にさせて頂いています。
今年は、98期生のジェンヌさんたちが多く退団していきます。
今、各組で宝塚を支えている95期生たちの退団も、いつか必ず訪れます。
二番手羽根を一度背負うと、羽根を小さくできないからとか。いろんな人事事情もわかってはいるのですが、もしも彼女たちに羽根を背負いたいという意思があるのなら、劇団に、深々とお願いしたいです。
どうか、次の星組公演と花組公演にて、たくさんの方々が笑顔で劇場を後に出来ますように。