多数派と少数派では、 少数派の方が肩身が狭い。というのは、今も昔も、古今東西変わることのない事実です。
宝塚で言うならば、昔から「添い遂げ退団してほしい人たちが多数派」 で、「単独退団して欲しい人たちが少数派」な傾向が見られます。
しかし昨今、その極端な二択よりも、「単独退団でもオーケー派」 という、添い遂げ退団も単独退団も受け入れられやすい傾向が見られます。
かく言うわたしも、ここに分類されます。
なぜいきなりこんな話をしているのかと言えば、朝月さんの単独退団に関するさまざまな意見をお見受けしたからです。
まず、添い遂げ派が多数ということは、昔からそれだけ、トップコンビとして、素晴らしい組み合わせの男役さんと娘役さんが多かったという事実に直結しています。
わたし自身、添い遂げ退団も大好きです。 ゴールもスタートもスッキリしていて、 確かに理想形な気もします。
じゃあなぜ単独退団も推すのかと言われたら、単独退団は「トップ娘役を盛大に見送れる」という最大の利点があるからに他なりません。
トップコンビ揃ってのサヨナラショーの際、サヨナラショーは 「男役中心」 です。 宝塚の世界は男役トップスターを中心に回っているので、ここを問題点として追及することはありません。
ただ、個人的には「時間を伸ばしてでも男役と同じくらい娘役のサヨナラショーの場面を増やしてほしい」というのが個人的願望です。
添い遂げ退団のサヨナラショーは、男役さんの歴史を辿りながら涙しつつも、ふと「娘役さんの存在」がないがしろにされていることを、いつも気掛かりに思っています。
もちろん、ふたりのデュエットなど、 トップコンビ揃っての退団のみの利点もあるのですが、どうしても 「主役は男役トップスター」 であることが否めないです。なぜなら、それが宝塚の世界だからです。
その点、単独退団は、 サヨナラショーで、「トップ娘役さんを主役として」見送れるのです。
添い遂げ退団と、単独退団。退団方法の違いにより、「サヨナラショーでのトップ娘役の扱われ方」にズレが生じます。
そのズレこそ、トップコンビが好きな人たちの中からも「単独退団でもオーケー派」が増えてきた要因になったのではないか、と推測できます。
男役さんはもちろんのこと、 娘役さんが好きなファンの方々も、ここ最近とても増えたので、「単独退団でもオーケー派」は、これからも増えていくと思います。
しかしながら、先日の朝月希和さんの退団発表の際、彩風さんと朝月さんが添い遂げ退団じゃないことでショックを受けている方々が多くいらっしゃると感じました。
それだけ「さききわ」というトップコンビを好きだった方がたくさんいたからだと思います。 ふたりの自立した、だけど仲睦まじい関係性が、皆様大好きだと思います。わたしもとても大好きです。
ふたり一緒を、宝塚の舞台でこれから観られなくなるのは確かに寂しいですが、 彩風さんとともに、素敵な思い出をたくさんくださった朝月さんが最後、幸せいっぱいの笑顔で宝塚を卒業出来るように、 皆さんと共に盛大に見送りたい心境です。
皆さんの中に現在、「特別なトップコンビ」がいるかもしれません。かつて、いたかもしれません。
この二人だけはずっと一緒がいいと思われる方々は、何も間違っていないと思います。そう思ってもらえるように、素敵な関係性を築いていくのがトップコンビであり、わたしたちはその関係性から多くの幸せを享受するからです。
けれどわたしは、添い遂げ退団でも単独退団でも、そのジェンヌさんが「やりきった」と思ったタイミングで退団されるのが一番だと思います。なので、退団の形にこだわりはありません。
ただただ、トップスターも、トップ娘役も、今までの宝塚での頑張りが報われるような最後が迎えられたら、これ以上のことはないと思っています。そしてそれは、トップになれなかった全てのジェンヌさんにも言えることです。
退団に関しては、タカラジェンヌも一人の人間なので、彼女たちの意志が最後、きちんと報われる形になることを、何より尊重したいです。
まだ半年ほど先ですが、朝月さんの退団は12月25日のクリスマスです。
その日が、寂しくも心温かくなる日になりますように。たくさんの拍手で包まれるサヨナラショーがあることを心より願っています。