ワッフルと宝塚のブログ

宝塚がある世界に乾杯

美羽愛さんにトップ娘役の可能性を感じた『殉情』一之瀬さんverライブ配信



 昨日、『殉情』一之瀬さんverのライブ配信拝見いたしました。

 いや〜バウワークショップ素晴らしいですね。少ない人数、上級生から下級生に至るまで全員で舞台を構築していて、ひとりひとりが本当に輝いていました。


 一之瀬さんと美羽さんverは、帆純さん朝葉さVerより谷崎潤一郎さんの世界観が薄くて、代わりに宝塚色がより強い舞台だと感じました。

 朝葉さんより美羽さんの春琴の方が感情に素直で、佐助が好きだということが分かりやすくて、佐助良かったね、と感じられたことが 「鬱々とした谷崎さんのメリバな世界観」 よりも 「純度100%な宝塚の世界観」を感じた理由かなと思います。

 一之瀬さんと美羽さんの佐助と春琴には、「純愛」って言葉がとても似合うように感じました。


 また、 一之瀬さんと美羽さんは感情放出型で、 表情ですぐに「喜び」 や 「苦悩」 が分かるタイプの芝居であり、「佐助と春琴が同じ気持ちを同じ形で共有している」ような気がしました。だからこそ行き過ぎた献身に感じない純愛だし「ふたりにとってのハッピーエンド」感が強かったです。


 帆純さんと朝葉さんは感情内包型で、表情に出ずとも心の中でこう思っているんだろうな、と観客に想起させるタイプに思え、「ふたりが同じ気持ちを共有するというよりも佐助の崇拝に近い愛とそれゆえ際立つ春琴の孤高」を感じました。谷崎先生の原作の世界観に近かったように思えます。


 出演者が違うとこうも物語が変わって見えるのだな〜と感慨深かったです。好みはあるにしろどちらが良い悪いではなく、「誰が舞台に立つかで作風は変わり、人こそが舞台をつくっている」ということが身に沁みました。ん〜その人たちだからこそ構築される「今だけの舞台」を感じられて、とても良かったです。



 まずは一之瀬さん演じた佐助についてなのですが。

 穏やかで平凡な男が春琴に出会い、谷崎世界観に連れて行かれるのかと思いきや、どこ「までもへこたれない打たれ強い大型犬のような佐助」という、新たな佐助像を感じました。

 なので、気質生真面目な佐助がその性格ゆえに狂っていくというよりは、「愛が大きすぎて鉛のような重たさがあるはずなのに、その愛で沈むことなくその愛を貫くことが本望」という、あまりにも前向きな感情が伝わってきて、谷崎先生のメリバ『春琴抄』 というよりは、全く新しい物語のようでした。



 また、多くの方々がおっしゃられていますが、 本当に珠城さんに似ています。 顔立ちがそっくり同じわけでも (今回のメイクは結構似ていましたが) 声や動き方が似ているわけでもないのですが、 舞台に立った時の包容力なのか、一之瀬さんが微笑むと、それだけでなんだかとても懐かしい気持ちになりました。あと、真ん中で歌うのがとても似合うと感じました。


 今の花組にはあまりいないタイプの男役さんだと思うので、これから先、もっともっと活躍の場が増えていったら嬉しいな、と感じました。バウ初主演、本当におめでとうございます。




 次に美羽さん演じた春琴についてなのですが。

 先述した通り、感情放出型タイプのお芝居をされます。なので、春琴の「隠そうとしているけれど隠しきれない嬉しさや佐助への気持ち」が、表情や雰囲気でダイレクトに伝わってきて、(佐助をめちゃくちゃ好いている)ということが一目瞭然でした。

 なので、春琴が高慢ちきな女性というより、可愛らしい女性に見えました。

 個人的には朝葉さんの春琴が春琴としては魅力的だったのてすが、春琴すらも可愛らしく思わせる美羽さんに、「THE 宝塚の娘役」 とくに 「花組の娘役さん」 だな、という感情を抱きました。

 というのも、美羽さんのネイティブな関西弁を浴びるたびに(気が強くてもかわいい……春琴に尽くす佐助の気持ちがわかってしまう……だって目を閉じていてもこんなにかわいい……) と、 私自身がメロメロになってしまったからです。


 美羽さんはとにかくダンスが上手なイメージで、 だからこそお芝居とお歌は、特にお歌に関しては苦手なのかなと感じたことさえあったのですが、先述の通りお芝居にはある意味キュートさがあふれていました。 お歌も、得意とまではいかなくても練習したことがひしひしと伝わってきて、ヒロインに選ばれた彼女の覚悟を感じるような成長っぷりが素晴らしかったです。


 今の花組さんは華奢な男役さんも多いので、美羽さんがトップ娘役になったら映えるだろうなあ、と。 春琴役なのにそう思わせてくださるほど、とても華やかで可愛らしく、素敵な娘役さんとして強く印象に残りました。


 1期下の星空美咲さんが組替えするかどうかにもよりますが、 タイミングによっては花組のトップ娘役さんに選ばれそうな、そんな可能性をひしひしと感じました。


 花組のトップ娘役はイレギュラーな決定も多いので、タイミングとチャンスが回ってきたら有り得なくもなさそうなのですが、この「タイミング」というものが、超路線ではない娘役さんにとってはとても大切になってきますし、娘役さんの努力次第でどうにかなるものではありません。

 トップ娘役は置いておくとしても、105期の星空さん以降で大抜擢を受ける娘役さんが花組に早期に現れなければ、美羽さんにはまたヒロインが回ってくる可能性があると思います。
 その際にはぜひ生で観劇したいな、と。そう思ってしまうほど、本当に可愛らしくて、これからの活躍が、とっても楽しみになりました。



 話していたらきりがないのですが、お蘭役の糸月雪羽さんをはじめ峰果とわさんなど、花組の皆様のお芝居がとても素晴らしかったです。出演者全員好きになってしまうような、本当にひとりひとりが輝く素敵な舞台でした。


 一之瀬さんと美羽さんの組み合わせがとてもしっくりきたので、幻となってしまった 『はいからさんが通る』新人公演が惜しくて惜しくて仕方がないのですが、今回ふたりをしっかりと拝見できる機会が廻ってきて、 本当に嬉しかったです。


 明日、11月7日の千秋楽までもう少し。このまま一之瀬さんをはじめとする素敵な花組バウチームがこの素晴らしき公演を完走できますことを心の底より願っています。


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