(※本記事には5回観てもなお思う『JAGUAR BEAT』演出へのマイナス意見が含まれますので、読みたくないなあという方はブラウザをそっと閉じていただけたら幸いです。)
暁さん星組大劇場デビューなので、できる限りチケットを取っているのですが、『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』および『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』の観劇回数もいよいよ5回目を迎えました。
ディミトリの分かりやすい物語やスムーズな舞台転換や歌の多さや衣装やジョージアダンスが大大大好きで、最近の星組さんのお芝居で個人的に一番ヒットしているのですが、そんな大好きなお芝居の感想を全部持っていってしまうショー『JAGUAR BEAT』。
初日から驚くべき衣装のギラギラと電飾のビカビカに目がバチバチになるこのショーが、個人的には全く得意ではないのですが、5回目を迎えると、ようやっと、このショーにも慣れてきたわけでして。拍手の箇所や手拍子など、タイミングがしっかりととれるようになりました。
しかしながら、慣れてもなお、主題歌を口ずさめるようになってもなお、星組の皆様が大好きでもなお、やはり(わたしはこのショーと相容れない……)の気持ちも変わらなかったです。
星組生の良さだけに目を向けようとしても、やはり衣装も電飾も謎の設定も器用に無視することはできませんでした。(特にピンクのライトの使いどころが嫌すぎるんですよね……。)
ナウオンにて、礼さんが賛否両論を察していらっしゃって、もっとジャガーを深めると意気込んでいらっしゃったのですが、今回の相容れない気持ちは出演者の皆様の頑張りとは別のところにあるので、礼さんが大きな責任を感じていることに、なんだかとてももどかしい気持ちと申し訳ない気持ちが沸き起こりました……。
ので、客席にいるときはこのショーが楽しいとばかりに手拍子しています。(ショーが好みではなくても星組の皆様を観るのは本当に楽しいので)
今回のショーが好きじゃなくても、礼さんと舞空さん率いる星組が大好きだという気持ちに変わりはないですし、星組の皆様の頑張りや熱量をひしひしと感じています。特に、今回は組全体の歌唱力が(特に極美さん)抜群に向上したなあと感動してしまいました。
ただもう、それでもなお、謎のストーリー仕立てと、うっとりできない衣装と、ジェンヌさんたちより目立つ電飾と、不必要な映像と、歌声の邪魔になるほどの音などなど、何度観ても演出に対して歯軋りをしたくなるのも事実です。
斎藤先生にとっては「ストーリー仕立て」であっても、そう解説に記していても、プログラムを熟読しても全く伝わってこないストーリーは大問題だと思うんですよね……。
星組の皆様の楽しいナウオンを拝見して、分からなかったストーリーが理解できたのですが、「理解してから観劇してもなお、なんでこのシーンがこういう形になるんだろう」という相容れなさが凄かったです……。
そんな『JAGUAR BEAT』にて、わたしなりに得た気づきがありまして。
これまで数多くのショーを拝見してきて、「中詰めがずっと続けばいいのに」とか。「出れるだけたくさんの生徒さんが全場面フル出演して活躍して欲しい」とか。「ずっと歌い続けたり踊り続けたりノンストップでいてほしい」とか。「銀橋は渡れるだけ渡ってほしい」とか。
静かでクラシカルなショーのときほど、そう感じるときもたまにはあったんですよ。
ですが、『JAGUAR BEAT』の緩急のなさ、中詰めのような総出演場面の連続、あちこちにジェンヌさんがいてあちこちでいろんなことをしている、などは、「想像以上に、全員の見せ場を消失させる」のだな、と気付かされました。
「ほとんどの場面が下級生まで総出で活躍している」と記せば聞こえがいいですが、「路線メンバーの見せ場さえ説明しにくいつくりであり、ジェンヌさんを埋もれさせている」ように感じました。
モダンだったりクラシカルだったり、オーソドックスなショーならばまた違ったのかもしれませんが、今回のギラギラ衣装とピカピカ舞台装置ではもう、齋藤先生の個性が爆発しすぎていて、生徒さんをあちこちで使えば使うほど、逆にジェンヌさんが目立たないという悪循環。
礼さんと暁さんという宝塚屈指のショースターを集めておきながら、「出番はとても多いのにコレというしっかりとした見せ場が少なく」感じられ、今回のショーは独特なのにも関わらず、「派手すぎるあまり印象に残らない場面が多い」と個人的には感じます。
出番は多いのに、見せ場が少なく感じられるのは、本当に致命的だと思います。
それこそ、ですよ。途中、羽が舞うような映像を使用するわけです。そういうときにこそ、舞台でジェンヌさんをしっとり踊らせたらいいのに、齋藤先生はジェンヌさんではなくダサめの映像を使うという、この相容れなさ……。
最初と最後の礼さんと舞空さんの映像は遊び心があっていいと思うのですが、あの羽が舞うような映像のときは、白い衣装をきたジェンヌさんをしっとり踊らせるとか、それだけでガラッと美しい場面が出来るというのに、今回のショーはそういう「ジェンヌさんを美しく魅せる」という拘りを一切感じなかったことも、相容れなかった要因だったと思います……。
ジェンヌさんを美しく格好良く綺麗に見せるより、齋藤先生ワールドの趣味が全開で、それが数場面ならまだいいのですが、プロローグからパレードに至るまで、世界観が変わることがなくて、齋藤先生のセンスと合わない人間には本当に厳しいショーでした。
ぶっちゃけ、フィナーレあたりの大階段の電飾ビカビカ攻撃は、ジェンヌさんより主張が激しく目立ってしまっています。主役は電飾や舞台装置ではなく「星組の皆様である」ので、本当に、もう少しピカピカを抑えていただきたいな……と。5回観ても同じことを思いました。
齋藤先生の濃すぎる趣味全開のショーがこの先もつくられたら困る(せめて5割は宝塚っぽくあってほしい)ので、マイナス意見を記してきましたが、星組の皆様が自身の責任だと感じてほしくないため、今回で『JAGUAR BEAT』に特化した感想を記すのはやめようと思います。
わたしは齋藤先生のつくるもの全てが嫌いなわけではなくて、例えばIAFAのフィナーレなど、男役の格好良さも娘役の可愛らしさも盛り上がりも素晴らしく、何度も繰り返し拝見するほどには大好きです。
なので、また、齋藤先生の趣味全開ではなく、衣装や電飾含め「引き算が施された」舞台が拝見できたらいいなと思います。
最後に、『JAGUAR BEAT』というショーが、人生で一番思い出深い作品になるという方もいらっしゃると思います。今回記したものは本当に個人的な感想なので、どうかお気になさらないでくだされば幸いです。
ネガティブな話を長々お読みいただきありがとうございました。ビカビカな電飾に負けない星組生の輝きをひとりでも多くの方が浴びれますことを心の底より願っています。