ワッフルと宝塚のブログ

宝塚がある世界に乾杯

【月組】蘭世惠翔さんというタカラジェンヌに思いを馳せる

 月組公演『応天の門』および『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』の退団者全員が大好きで大好きで大好きで、退団される皆様に思いを馳せると本当に寂しくて仕方ない今日この頃。


 じゃあ大好きな気持ちを記しておきたいなあ、と思い、今回は蘭世恵翔さんについて記しておきたいな、と思います。


 蘭世さんは、お母様が有名人なこともあり、良い意味でも悪い意味でも、早くからずっと注目され続けたジェンヌさんでした。


 2016年に星組で初舞台を踏んでから、2019年月組公演『ON THE TOWN』 まで男役として活躍された蘭世さん。

 その後、蘭世さんが娘役に転向される発表があり、2019年月組公演 『I AM FROM AUSTRIA』 より、娘役として活躍し続けられたジェンヌさんです。


 先日の千秋楽にて、『エリザベート』の新人公演マダム・ヴォルフ役が楽しくて娘役への転向を決めたとおっしゃられていました。



 ということで、蘭世さんを語る上で、男役から娘役に転向することについて触れないわけにはいかないので、ここで少し記させていただくのですが、男役から娘役に転向したジェンヌさんを良く思わない人たちをちらほら見かけます。


 特に、転向した娘役さんがトップ娘役候補として抜擢されればされるほど反感を買います。

 その理由は、「娘役一筋で突っ走ってきた、最初っから娘役なジェンヌさんたちに失礼であり可哀想だから」という意見が大半を占めていると感じています。


 「娘役が大好きで、 入学前から娘役を志し、 娘役一本で娘役を極めてきた方に娘役として報われてほしい。」


 上記の気持ちはわたしも深く深く理解できるのですが、 だからと言って、「散々悩んで覚悟して転向を決意した元男役さんたちは蔑ろにしていいのか」と言われたら、絶対にそれは間違っていると思います。

(それに、男役志望だったけれどそれは無理だと分かったから娘役を選んだ方々がトップ娘役になった例もたくさんあります)


 個人的には、宝塚が大好きという気持ちひとつあれば、男役をする上でも娘役をする上でも、志しとしては充分すぎると思っています。


 転向に過敏になる原因としては、過去、「男役から娘役に転向してトップ娘役になった愛希れいかさん」の例があるからだろうな、とは感じています。


 愛希さんは、「今のままでは少年役しか回ってこない」と周囲に助言されていたこと、現にお芝居でもショーでも娘役を担うことが多かったこと、 後に相手役となる龍さんに背中を押されたことなどなど、さまざまな理由により研3で娘役に転向されました。

 転向されてからすぐ新人公演ヒロインやバウ・東上公演ヒロインを獲得し、翌年には月組のトップ娘役に就任されました。


 元男役だったのに、あれよあれよとトップ娘役に就任したことが気に入らない方も多かったようで、かなり批判された愛希さんでしたが、退団前には娘役としては異例となるバウホール公演主演を担うまでに至る、とても人気な娘役さんになりました。



 愛希さんの例はまさに特例中の特例ですが、転向した娘役さんが苦手な方々は、愛希さんの件を受け、「娘役に転向するのはいいけれど、 最初っから娘役だった人たちがトップ娘役になる邪魔はしないでね」 という考えが根底にあるように感じます。


 その証拠に、研3で娘役に転向した元宙組娘役である純矢ちとせさんは、惜しまれながら退団されたイメージがとても強いです。実力を兼ね備えていることに加えて、「トップ娘役にはならないだろう立ち位置で活躍してくださったから」という理由が大きいのだと思われます。


 だからこそ、転向してから活躍するジェンヌさんには「さまざまなキツイ意見」が向けられることがあります。


 転向し、きつい意見を向けられるジェンヌさんと言えば、研3で娘役に転向した月組101期の天紫珠李さんが挙げられます。


 転向した当初は、ザワザワしていたくらいだったのですが、天紫さんにも新人公演ヒロインや東上ヒロインが回ってくると途端に白羽の矢が立つ事態となりました。

 さらに、「天紫さんが美園さんのあとにトップ娘役になるかもしれない」と噂されるほど役付きが良くなった時には、かなり否定的な意見を見かけていました。

 愛希さんというトップ娘役を排出した月組の娘役さんだからこそ、トップ娘役になる現実味が増し、転向反対派の方々に、実力は二の次で批判され続けていたように思います。


 最初っから男役を選んでいなかった。それだけで、何もかも否定されるのです。それは、あまりに辛いことだと感じます。


 転向反対派の方々が否定し続けたことが理由というわけではないはずですが、天紫さんは結局、 美園さんの後にトップ娘役にはなりませんでしたし、別箱で責任の重たいヒロインを担っても担っても破線上ヒロインにはなれないどころかなかなかスチールも発売してもらえない渋い扱いを受け続けてきました。


 そして、そんな月組で蘭世さんが娘役に転向されましたが、蘭世さんに至っては新人公演ヒロインが回ってくることもありませんでした。


 「月組は転向した娘役ばっかり重宝する」と辛辣に投げかける人もいらっしゃいますが、じゃあそんな辛い言葉を投げかけられる分だけ、彼女たちにはきちんと報われてほしいよ、と感じてしまいます。



 蘭世さんは暁さんのブリドリに出演したことがあります。その際、男役から娘役に転向することをとても悩んだと涙ながらに話す蘭世さんのことを、わたしは未だに忘れることが出来ません。
 マダムヴォルフで娘役の楽しさを知って、だけど、転向することは、本当に人生を賭けての選択なんだと思います。


 わたしはかつて男役である蘭世さんのファンではありましたが、身長は男役になれるギリギリだけれど地声がとても低く、男役と娘役どちらが適任なのか選択が難しかっただろうな、とは常に感じていました。

 そのため、娘役への転向は、そんな蘭世さんが、さまざま悩みに悩んで出した結論なんだろうなと思うと、娘役さんになった蘭世さんもとびっきり応援したいという気持ちでいっぱいになりました。


 先述したとおり、蘭世さんには新人公演ヒロインが回ってくることなく、それゆえ役付きがそんなにも良かったとは言えませんでした。
 ですが、それでも蘭世さんの歌声や美しさはとても目立ち、長身美女な月組娘役として、どこにいても素敵に輝く娘役さんになりました。
 

 ジェンヌさん全員、表には出さなくても、 軽い気持ちで宝塚人生を歩んでいるわけではないことが窺えます。葛藤も覚悟も非難も背負って立っている彼女たちに、転向したからああだこうだ言うのは野暮だな、と感じざるを得ません。


 生きていればたくさんの困難や大変なことがあり、転職や部署異動が珍しくない昨今、どうしてジェンヌさんたちにだけそれを認めないのだろうか、と。転向した娘役だからと言ってずっと厳しい目を向けるのではなく、その努力に見合った正統な評価をしてほしいな、と改めて感じました。




 蘭世さんは本当に実力あるジェンヌさんで、男役時代の『エリザベート』ルドルフ役も、娘役時代の『出島小宇宙戦争』 ヘレーネ役も、今思い出すだけでもとっっっても素敵で、男役としても娘役としても、本当に大好きなジェンヌさんだな、としみじみ感じています。

 
 どこにいても美しく、見た目とは違って豪快な笑顔を見せてくださる。そんな蘭世さんのことが大好きで、退団されることが本当に寂しいのですが、最後の舞台となる『応天の門』および『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』にて、素敵に活躍されるお姿が本当に眩しくて仕方ありません。

 お芝居の若き日の高子も、ショーで歌って踊る姿も、すべての瞬間が発光しているかのように輝かしくて、唯一無二の魅力を放っている蘭世さん。

 東京公演も、蘭世さんが悔いなく宝塚の舞台に立ち続けられますことを、大千秋楽のその日まで、とにかく怪我なく病なく、たくさんの方々がそんな蘭世さんの美しい姿を最後の日まで拝見できますことを心の底より願っています。


にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村