ワッフルと宝塚のブログ

宝塚がある世界に乾杯

星組『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』を観劇して

 WBC2023 決勝「日本 vs アメリカ」に日本中が熱狂した今日という日、有難くも星組梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演『Le Rouge et le Noir赤と黒~』を観劇させていただきました。


 いや〜もう本当に最高でしたね。何を記しても陳腐になってしまうほど最高の舞台でした。


 元々、「赤と黒×谷先生×フレンチロック ×礼さん率いる星組の皆さま=最高」の計算方式になることは演目決定当初から分かり切っていたようなものだったのですが、実際観劇させていただくと、まあ〜〜〜〜〜興奮いたしました!!!


 期待を裏切らない良さがそこにはありましたし、膨れ上がった期待のその上を超えていく感覚が本当に刺激的でした。


 まずは演出家である谷先生なのですが、私は谷先生のお洒落でハイクオリティな舞台装置と色彩感覚が大好きで、今回も「赤」と「黒」のモチーフをしっかりいかしたハイセンス舞台に仕上がっていてそれだけで感無量でした。
 舞台装置の使い方、特にギロチンと薔薇の演出が最高で、そして谷先生も関わってくださっただろう星組生のビジュアルが最高に好きでした。素晴らしかったです。

 ジュリアンとレナール夫人の影とその影を使っての物語の表現の仕方も最高だったのですが、思い返すと全部最高で谷先生はとても頭が良いんだなとしみじみ感じました。


 ストーリー自体はいつもの宝塚版の赤と黒の方が分かりやすかったのですが、「とにかくこのナンバーを聴き続けて酔いしれろ!」なミュージカルなので、原作ファンには申し訳ない気持ちもあるのですが、物語うんぬんより歌に酔いしれたい方にはこんなにハマるミュージカルはないというくらい最高でした。


 もう本当に全部が良すぎてドキドキが止まらなくて一瞬の舞台で何度でもおかりしたいのにもうチケットがない悲しい現実に打ちひしがれそうなのですが、こんな素晴らしい舞台を一度でも観劇できた幸運に感謝しながら、へたくそなりに感想を記したいと思います。




 ★まずは礼真琴さんについて


 ナポレオンを崇拝する野心にあふれた主人公のジュリアン・ソレル役を見事に演じきっていらっしゃった礼さん。

 礼さんは上手すぎるがあまり歌に注目されがちですが、 お芝居もこんなに上手いんだなあと思わせてくださるほど拗らせている青年を見事に演じきっていらっしゃいました。歌がドメインの舞台ではありましたが、やはりお芝居も欠かせません。


 野心の 「赤」 欲望の 「黒」。そんな赤と黒は「怒り」が原動力の物語だと思っているのですが、歌声や表情からその激情が素肌に伝わって来るかのようでした。


 また、ジュリアンの陰鬱で鬱屈とした退廃感と、繊細さのなかにも闇が広がっている感じが低音ボイスと共に素晴らしくて、そんな中で暁さん演じるジェロニモと話すときの表情豊かな演技も素敵でした。 陰なジュリアン・ソレル、陽なジェロニモの対比もとても良いバランスだったと感じます。


 また、さきほど歌に注目されがちと言いましたが、やっぱり注目せざるを得ないほど歌が上手すぎました。今回の、「歌!歌!歌!」を全部確実に歌いこなしてしまう礼真琴さん本当にすごかったです。

 礼さんが録音の礼さんとハモる曲もあったのですが、そんなのうまいとうまいの相乗効果で当たり前みたいに最高の音楽になりましたし、内なる野心を歌にのせてとんでもなくうまく歌い上げてくださる礼さんジュリアンを一生浴び続けていきたいと本気で思いました。

 ソロやデュエットなど、難曲を難曲と思わせず次々に歌いこなす礼さんを拝見しては、(これが礼真琴様なんだよなあ) とその歌のうまさに泣きました。本当に素晴らしかったです。






 ★暁千星さん について


 続いては、 主な配役に礼さんと共に掲載されていたジェロニモ演じる暁さんについて。

 ストーリーテラーであり歌手であり友人であり傍観者であり見届け人であり、とっても面白い役どころな暁さん。裏を返せば、とっっっても難しい役どころの暁さん。


 宝塚の赤と黒ジェロニモが登場するのは本作が初めてなのですが、台詞も出番も多くてそのうえ神出鬼没で、これでもかとばかりに存在が際立っていました。


 そして何といっても、もうドシンプルに見た目が格好よくて格好良くて格好良すぎて内心ひゃ〜っとときめいてしまいまして。

 とんでもなく格好いいのに、暁さんが演じるからこそかわいらしく感じるところもあって、そんなふうに油断していたらハートのど真ん中を撃ち抜かれるドシンプルな格好良さを堪能できる場面があって参りました。いや本当に、夢みたいにバチバチに踊ってくださるスーパー暁千星様タイムがあって心臓が持たなかったです。


 幕開けの客席いじりや、拍手をあおるジェロニモさん。 台詞の多さにハラハラもしましたが、やっぱり唯一無二の存在感が暁さんにはあるなあと惚れ惚れしてしまいました。期待していた礼さんとのデュエットはあまりなかったのですが、暁さんの最高な歌声とダンスも堪能できて本当に幸せでした。ジェロニモ暁さん最高です。




 ★有沙瞳さんについて

 有沙さんは第一幕のヒロインであるレナール夫人を演じられています。

 町長の妻であり、子どもたちの家庭教師であるジュリアンに心惹かれる貞淑な人妻役なのですが、今回の有沙さんはほぼ素化粧だと思わせるような薄いメイク。なのに美しすぎる有沙さんにまず心奪われました。


 それにしても有沙さん、さすがと唸ってしまうくらい、歌声も演技も本当に素晴らしかったです。


 有沙さんのレナール夫人は、現実を分かっていて、 きちんとした「計算」もできるといった印象がありました。それでいて複雑な心の表現や情感あふれる、だけど堂々とした演技。特に2幕のお芝居で、レナール夫人の想いが胸に突き刺さってくるようでした。

 役柄ゆえなのか、なんだか雪組時代に観ていた有沙さんを観ているような感覚もあって懐かしくもなりましたが、本当にお手本のような娘役さんだと改めて惚れ惚れしました。





 ★詩ちづるさんについて。

 詩さんは第二膜のヒロイン的存在、マチルドを演じられています。

 ラ・モール家のお嬢様で、勝気でプライドが高いけれど、その実、愛情深いマチルド。

 恋に落ちる様をこれでもかとばかりに表現していて、ジュリアンへの気持ちを言い当てられたときのお芝居に、 (ああああ〜)っとこちらが身もだえてしまうほど演技が圧巻でした。

 華奢な見た目のかわいいだけではなく歌と芝居という実力も兼ね備えているところが詩さんの素晴らしいところだと改めて好きの気持ちが増しました。

 一癖ある、恋に恋するご令嬢が、愛する人のため大人になっていくその表現力が素晴らしくて、とてもじゃないけれど目を離せなかったです。

 詩さんにはなかなか別箱ヒロインが回ってきませんが、これはじゅうぶん詩さんのヒロインとしての魅力を発揮させる役柄だったと思いますし、詩さんのヒロインが観たい!と。 そう強く思わせてくださる歌と芝居のすばらしさでした。





 ★ひろ香祐さんと小桜ほのかさんについて。


 ひろ香さんと小桜さんはお金に目がない成金夫妻を演じられています。

 個人的に、二人が演じるヴァルノ夫妻がとっても大好きだったのですが、このふたり、清々しいほど悪役です。

 明確な悪役で、 ブルジョワで下衆。舞台を引っかき回すのに、どこか憎めない要素も持ち合わせているおふたりにわたしは夢中になってしまいました。

 特に小桜ほのかさんの歌は圧巻で、さまざま魅力的なキャストや役柄が多いこの物語の中、 小桜さん演じるヴァルノ夫人が出てこないかと期待してしまうほど、とっても魅了されてしまいました。
 クセになる夫婦、 この物語の絶妙なスパイスであり、『宝石こそ勲章』のデュエットが最高でした!




 そして、最後に専科からご出演してくださった英真さんと紫門さんについて。

 まずは、詩さん演じるマチルドの父親役、ラ・モール侯爵を演じてくださった英真さん。

 愛情深い父親役を演じさせて右に出るものはいないと感じるほど深みのある英真さんのお芝居で、舞台のあちこちが引き締まります。 英真さんのソロナンバーからの流れでわたしは泣きましたし、やっぱり素晴らしく沁みるお芝居をされるなあとうっとりしました。


 紫門さんはムッシュー・ドレナール役で、 有沙さん演じるレナールの旦那なのですが、奥さんのことをなにも分かっていなかった上流階級の男が本当によく似合います。 英真さん同様にソロ曲もあって、 紫門さんならではの安心感と安定感でいっぱいでした。そして相変わらずの麗しさでした。



 また、下級生たちのコーラスやダンスさせるタイミングなど、役が少ない代わりに下級生たちの使い方も抜群すぎて、これだから谷先生への信頼度は落ちないしショーの演出もぜひしてほしいと感じました。



 谷先生による、ドラマシティーだからこそ高低差を用いて表現する空間把握能力の素晴らしさが光っていたのですが、舞台装置の良さ演者さんたちの圧倒的歌唱力含めてメインホールで再演してほしいと心の底から切望しまうほど最高でした。歌声と演出の力により、 満足感の最高値を叩き出されたと言っても過言ではございません。

 目が足りなかったですし、星組全ツの初日とも日程が被っていますし、箱が小さい代わりに三回くらい配信して欲しいと切実に願ってしまうほど、何度観ても飽きない作品ってこういうことなんだろうなと強く実感いたしました。

 
 全キャスト最高すぎて最高だってことを伝えたいがためにわやわやした感想になってしまいましたが、本当に最高の舞台でまだ心臓がドキドキしています。そして、こんなにもわやわやした感想を最後まで読んでくださったお優しい方々、本当にありがとうございました。
 

 何度でも観劇したいと思わせてくださるほど素晴らしかった星組公演『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』は幕を開けたばかりですが、どうかこのまま千秋楽まで迎えられますことを心の底より願っています。


 星組赤と黒チームの皆様、素敵な時間を、素敵な舞台を本当に本当ありがとうございました! 予定されているライブビューイングもとっっっても楽しみです!


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