ワッフルと宝塚のブログ

宝塚がある世界に乾杯

あの時から変わってしまったこと・変わってほしいことの話


『観客も動植物役の実験劇、演出家・上田久美子がパリ研修を終え開催…「空間自体が作品に」』(https://news.yahoo.co.jp/articles/5e9c4879fb0ddf1335db37d52ebc67b5f02b6aed?page=2


 この記事の入団年齢改定案に関するたくさんの意見を見ました。


 入団年齢が変われば新人公演学年とかいろんなことも変えていかなきゃいけないだろうな〜と思いつつ、私は『創立100周年以降のビジネス至上主義化』の方が気になりましたのでその件を記したく。



 本記事の中で劇団員が急死した件について、

 『亡くなった劇団員とも一緒に仕事をした。「真面目で優しい人という印象だった。そういう人がそんなことになるのだとしたら、自分たちの続けてきたことは間違っていたということ」』としたうえで、上田久美子氏は以下の指摘をしています。



 『上田が内側で感じていたのは、創立100周年以降のビジネス至上主義化だった。

 「社会に資する作品を作りたい」との思いで退団を決めたが、劇団の利益重視の傾向も離れる理由の一つだったと明かす。

 「出演者の労働条件がタイトになったことに、演出部からも声をあげていたけれど、結局は止められなかった。後悔している」』


 『全員が「志」を共有することも必要だと訴える。「劇団はビジネスではなく、関西の貴重な文化を発信するという大義に立ち返ることが大切では」』


 ということなのですが。



 この『創立100周年以降のビジネス至上主義化』については頷けるところも多く……。


 この時期行われたのは、新規顧客の獲得のための海外ミュージカル偏重でして。そして満員御礼が当たり前になったんですよね……。


 それまではオリジナル演目で脚本の質うんぬんよりはスターの格好良さ、つまり駄作でも愛するコアなファンが多かったわけですが。
(ファンから脚本に文句がなかったわけではなく、それでこそが宝塚だったというか)



 しかしながら100周年以降は舞台そのものとして高品質な海外ミュージカルがかなりの頻度で上演されるようになりました。
(本当はもう少し前からですが。そしてこのあたりからファンの歌ウマ重視の傾向が盛んになります)



 海外ミュージカルという品質の良い作品を華やかな宝塚で上演する。結果として宝塚ファンの人数はかなり増加しました。


 その味を占めて宝塚はオリジナルより海外ミュージカルを偏重する傾向となりました。


 そしてこの偏重傾向から見えるのが、利益重視の姿勢なのかな、と。


 オリジナル脚本をどんどん書かせて演出家を育てるというより、満員御礼になるような作品を持ってきて演出潤色するというか。
(そしてそれが今の演出家不足を招いたような気がするのですが長くなるのでここでは割愛)



 満員御礼なら良いではないか、儲かるに越したことはないと思うものの、利益重視に傾くと何が起きるか。

 それは、立場の弱い方々に皺寄せが発生しやすくなるということです。



『出演者の労働条件がタイトになったことに、演出部からも声をあげていたけれど、結局は止められなかった。後悔している』



 演出部の声がどれだけのものかは分かりませんが、声をあげるくらいにはひどい現状だったのでしょう。(これは過重労働にもつながる話ですね)


 声をあげる人たちがいたところで、利益重視で耳を貸さなかった大人たちがたくさんいるわけです。


 これこそ、宝塚歌劇団に対して阪急阪神HDが「協力姿勢」から「干渉姿勢」に変化していった結果なのかなと私は勝手に想像しています。

 
 110年の歴史があり、伝統と美学を重んじる宝塚劇団歌は「関西の貴重な文化」。


 それでも、そんな劇団で儲けることが出来ると分かり、その文化を大切にしていくよりも利益を優先することの旨味を阪急阪神HDが噛み締め続けているのかなと思います。


 ただ、利益重視の傾向によって、たくさんの人やモノは犠牲になってきました。


 利益を追い求めるあまり、大切なものを失くし続けていることを、劇団というより阪急阪神HD(そこから劇団にやってくる上層部含む)が本当の意味で理解したときやっと、劇団に真っ当な変化や改革がもたらされるのだと思います。


 110年続く、世界でも類をみない宝塚歌劇団という歴史・文化。「ビジネス」という観点ではなく「貴重な文化」として守り続けてくれるか否によって、この先の宝塚の歩んでいく道は変わっていくのだと思います。


 ジェンヌさんたちがどれだけ宝塚を愛し、精一杯尽くしてくれても、それが上から搾取されるだけならばきっと、宝塚の未来は明るいものにはなりません。


 新規顧客獲得が大切なのは分かります。ただ、大切にするものを見失っては、組織の存続そのものが危うくなります。


 たくさんの人が愛してきた宝塚歌劇団という組織。その組織でこの世で一番悲しいことが、起きてはならぬことが起きてから一年。より良き変化がもたらされ、未来が明るく照らされますことをいちファンとして心の底より願っています。


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