ワッフルと宝塚のブログ

宝塚がある世界に乾杯

息苦しい圧。娘役さんたちへの厳しい意見に思うこと


 月城かなとさんと海乃美月さんの退団発表から早3日。


 昨日はスカステにておふたりのお披露目公演であるロマ劇&FULLSWING!が放送されており、実際に客席で観劇したそのときよりも、昨日の方が100倍くらい泣いてしまいましたね……。


 何度観ても、なんて素晴らしいお披露目公演なのでしょうか。クスッと笑えてうっと泣けて、最後はハッピーエンドなお芝居と、クラシカルで洒落たジャズショーの二本立て公演、何回観ても幸せな気持ちに包まれてしまいます。


(※ちなみき円盤では著作権の関係でショーのマイウェイ音源がカットされていますが、スカステでは月組生たちのマイウェイが全流れしているので円盤持ってる人もおすすめです)



 頼もしすぎて、当時は1作目の安定感として驚愕した月城さんと海乃さんですが、トップになって大劇場4作目を終えた今、改めてお披露目公演を拝見すると、やはりどこか初々しさがあってたまらなく可愛いなあと感じてしまいました。



 いや〜もうね、サヨナラショーにて、「この場所であなた見つけ〜この場所で〜出会い〜」をふたりで歌うのかなと想像するだけですでにあんまりに美しすぎるエンディングに涙してしまうのですが、月城さんの相手が海乃さんで、海乃さんの相手が月城さんでよかったなあと、改めて思うお披露目公演でございました。



 そして、昨日は月城さんに思いを馳せさせていただいたので、本日はもちろん海乃さんについて思いを馳せさせていただきたいところなのですが。



 今回の海乃さんの退団発表に、そうじゃないといつまで居座るんですか的な意見が見受けられまして。


 また、記者会見の受け答えについて、一年考えたことに対して批判している方がいて悲しくなったのですが、なんでそんなにトップ娘役って尊重させてもらえないんですかね……。


 
 あと記者会見はさまざまカットされるので、ニュアンスが伝わりにいところもあるかと思いますが、この日刊スポーツさんの記事https://www.nikkansports.com/m/entertainment/news/amp/202309260000520.htmlによりますと、海乃さんは月城さんより残ろうと考えていたのではなくて、「もともと月城さんと同時に退きたい思いはあった」けれど、月城さんが即決しないでもいいし自分の人生なんだからいきなり決めるのではなく向き合いなさいねと考える時間をくれた。


 だからこそ海乃さんはまじめに自分の人生を考え続けてのフリューゲル稽古前での答えなわけでして。(そしてこの期間は、迷いではなく、自分の思いに向き合う再確認の時間だったとも記されています。)


 批判している人はそもそもヒロインをたくさん経験してきた海乃さんが5作もトップ娘役なことが気に入らないという意見が根底にあるんだと思うので、「月城さんと同時に退きたい」という海乃さんの思いがそもそも気に食わないんだろうなとは思うのですが、まあなんていうか、娘役に向ける厳しさは未だに根強いものがあるなあと切なく思います……。



 ということで、今日は海乃さんへのこれまでに思いを馳せるのではなく、最近マシになったとは言え、娘役さんへの厳しい見方が辛い話について少しだけ記させていただきたいのですが。


 例えば、気に入らない上級生娘役さんがトップもしくは別箱ヒロインをとると、「そのせいでこれからの素晴らしき下級生娘役たちが辞める!」と言われ、下級生娘役さんがトップもしくは別箱ヒロインをとると「そのせいで今の組に欠かせない上級生娘役さんたちが辞める!」と言い張る人たちがいらっしゃいます。


 これを組プロデューサーに言うのはいいのですが、抜擢を射止める娘役さんに物申すのは違うよなあ……と常日頃思っておりまして。


 宝塚というひとつの大きな川の流れの中で、ただひたすら頑張って精一杯娘役として励んでいる彼女たちを恨むのは、違うと思うんですよ。


 つまるところ、自分が気に食わないさまざまな決定を「自分の気に入らないトップ娘役」や「抜擢された娘役」のせいにしすぎているなあ……と感じずにはいられません。



 また、現在海乃さんがトップ娘役である月組は、2023年タカスペに出演する娘役が彩さん(99期)と天紫さん(101期)だと発表され、そこに天彩さん(100期)も組み替えしてくることから、今の月組の娘役状況を「停滞」と表現されることがあります。


 他組が105期の娘役さんたちを登場させるからこそそんなふうに表現されるんだとは思うのですが、上級生になった娘役さんたちが活躍できていることって、そんなにも困った状態なのでしょうか。そういう組があることは本当に娘役さんのためにならないのでしょうか。


 ちなみに、月組下級生娘役たちがタカスペに登場できないことはわたしも辛くて嘆いたのですが、それは彩さんと天紫さんのせいではありません。ただひたすら、通常より娘役の出演人数を極端に減らした劇団側のせいでしかないので、もしも上級生路線娘役さんたちの停滞を責めているとしたら、お門違いだと感じます。



 あとはそうですね。上級生娘役さんたちの活躍を好ましく思わない人たちは、「若い娘役は大勢いるのに、後進の事を考えて潔く身を引けないなんて全くもって美しくないし図々しい」という意見を盾に批判されるのだと思います。


 新陳代謝が根幹の宝塚、その意見は確かに尤も重要なものでございます。


 ですが、その意見がたったひとつの真実であり正義のように振り翳されますと、「上級生娘役さんたちだけでなく下級生娘役さんたちも居づらくさせることになる」と私は思うわけでして。


 だって、潔く退団しないと数年後にはその娘役さん自身が同じことを言われるわけですから。そんな圧力のかかる窮屈な未来よりも前に退団を選びたくなるよねって話ですし、それでいいのかって話なんです。


 もちろん、「惜しまれながら退団されることこそ美しい」という考え方も素敵だと思うのです。


 ですが、一度きりの人生。ようやっと入った大好きな大好きな宝塚で、最後までチャンスを狙い続けてほしいなと思いますし、思う存分宝塚人生を謳歌してほしいなと願ってしまいます。それが、努力し続けてきた彼女たちの正当な権利だと思うからです。




 さらにですね。「男役10年と言うけれど、娘役だって絶対10年かかると思う」と。


 退団時の挨拶にて、娘役はそれくらい深いものなのだと伝えてくださった娘役さんがいらっしゃいます。


 最近はまだマシにはなりましたが、娘役が蔑ろにされがちな宝塚の世界において、わたしは、娘役への誇りに満ちた彼女のこの考え方や言葉が大好きで大好きでたまらない人間でございまして。


 トップ娘役は若くないと旬が過ぎているし、そもそも上級生娘役が出張り続けているのはキツイ、みたいなニュアンスの意見を見かけるたびに、本当に人の価値観って千差万別だなあと呆然と立ち尽くしてしまうのですが、そういう「娘役にひたすら若さや謙虚さを求めすぎる傾向」は、なんなかなあとモヤモヤしてしまうのが本音です。

 10年かかって磨き上げたものは、とてもとても美しいと、個人的には思います。



 まあ何が言いたいかと申しますと、娘役への辛辣な意見が少しでも減って、娘役さんへの息苦しい圧が少しでも軽くなってほしいな〜簡単に悪口を言っていい流れにならないでほしいな〜娘役さんたちにはただひたすらのびのび娘役人生を謳歌してほしいな〜〜〜の気持ちを表現したくて、本日は以上のようなことを記させていただきました。



 いやもう、上記すべてある種わたしによる傲慢な意見でしかないので申し訳ございませんの気持ちも湧き起こるのですが、ただひたすらに、海乃さんをはじめ頑張っている娘役さんたちを学年問わずこれからも全力で応援させ続けていただきたい気持ちでいっぱいです。




 最後に。全く話は変わりますが、明日は宙組宝塚大劇場公演『PAGAD(パガド)』『Sky Fantasy!』初日の日でございます!!!

 いよいよ、芹香さんと春乃さんのお披露目公演がどんなふうに幕開けるのかドキドキが止まらないのですが、お二人にとって、そして新しいスタートを切る宙組にとって、最高に素敵な公演になりますことを心の底より願っています。


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