ワッフルと宝塚のブログ

宝塚がある世界に乾杯

演出家の先生の偏り問題について


 花組『鴛鴦歌合戦』 の上演が発表されたのは去年のことになりますが、それによって演出家の小柳先生が柚香さんトップ時の花組宝塚大劇場東京宝塚劇場公演をすでに3回担当することが決定しました。


 6回中3回。つまりは二分の一の確率。


 これって、なかなかの偏った比率だと思うわけですよ。


 演出家の先生が綺麗にバラけるトップさんもいらっしゃるのですが、柚香さんのように、「このトップさんにはこの演出家の先生がよく回ってくるなあ」と感じるトップさんもいらっしゃいます。


 同じ演出家の先生が回ってくる「良い面」としては、トップさんはもちろん、先生が「今のその組」について詳しくなることにより、「適材適所の活躍を下級生にまで施してあげられること」だと思います。

 長い時間をかけて関係を構築して、その組のさまざまなジェンヌさんに先生が詳しくなり、ひとりひとりをもっと活躍させてあげられる。これは本当に素晴らしいことだと感じます。



 反対に、 同じ演出家の先生が回ってくる 「悪い面」としては、「新鮮味に欠けやすくなること」だと思います。

 お芝居は作品が違えばキャラクター造形も違うので、全く違うものになりやすいわけですが、どんな物語であっても(作・演出の場合)、衣装や舞台装置や台詞から 「その演出家の先生の独特のセンス」が漂ってきます。

 また、ショーに関して言えば「構成や用いる衣装などが似通いやすく」なります。



 好きな組にドンピシャの先生が何回も来てくださったら嬉しい反面、好きな組に頻繁に「苦手な演出をする先生」が来ることになると、ちょっとモヤモヤすることもあると思うんですよ。

 好きな組なので観るけれど、観たいけれど、(またこの苦手な演出家か……)と心の中で思う方もいらっしゃると思うんですね。
 組によって演出家が偏ると、(あの組はいいなあ……)という気持ちにも繋がりやすくなると感じます。


 お芝居の演出家の先生を思い浮かべるだけでも、「重ためだが余韻の残る作品をつくるのが得意な先生」「軽めだが万人受けしやすい作品をつくるのが得意な先生」 「脚本よりとことん舞台装置にこだわる先生」 「とにかく歌わせる先生」 「逆に歌がほとんどない先生」 「メルヘンチックなゆめゆめしい話が得意な先生」 「少年ジャンプを彷彿とさせるような作風が得意な先生」「恋愛要素より男の友情が得意な先生」「説明が長ったらしい先生」などなど。

 先生によって、得意なものや力を入れる箇所、好みの衣装や舞台装置などはさまざまです。



 苦手な演出家がいない方ももちろんいらっしゃるとは思うのですが、人によって好みはそれぞれなので、やっぱり「合う演出家」と「合わない演出家」がいる人も多いと思います。


 「宝塚の舞台に対して求めるモノ」を皆様が思い浮かべるとき、「下級生の出番よりとにかく脚本が第一」や、「話は面白くなくても衣装や舞台装置が良いこと」や「とにかく楽曲が多いこと」などなど。人それぞれ求めるものは違うと思います。


 100人いれば100人、舞台に対して求めているものが違うのですから、少なくとも、「ひとつの組でさまざまな演出家を使うこと」こそ、その需要を満たす可能性が高くなるはずです。


 また、昨年末の演出家によるハラスメント事件によって、その演出家の手掛けた作品は少なくとも数年間、大々的には取り上げにくくなったように思えます。ジェンヌさんたちに罪はないのに、勝手にそういう空気になってしまうわけです。


 もしも事件を起こしたのが「ひとつの組に偏っていた演出家」だったら、これってその組のファンの方々にとって、とてもじゃないけれど立ち直れなくなるようなことだと思います。

 演出家と作品をぶつんと切り離せる器用な人たちばかりではないはずなので、「ひとつの組に偏っていた演出家が事件を起こしたらその組の作品がごっそり観れなくなる」心持ちになる方もいるわけです。


 もちろん、事件など起こすこと自体が許せないのですが、今回の演出家の先生は5組それぞれをバランスよく受け持っていたので、5組とものファンがその痛みを共有できたところもありました。

 もしもこれが「ひとつの組に偏っていた演出家」だったならば、「被害に遭ったのは贔屓じゃなかったから良かった」とか、「自分の好きな組じゃなかったから良かった」とか、そういう「ひとつの組が犠牲になればいい思考」で、二次被害的にその組を傷つけていたかもしれません。



 少し話が逸れてしまった気もするのですが、ジェンヌさんたちの期限付きの宝塚人生は、想像よりも短く、思っている以上にあっという間です。

 だからこそ、なるべるさまざまな演出家の先生に担当してもらい、「そのトップさん率いる今の組の新鮮な魅力」を、先生ごとに引き出してあげてほしいな、と感じます。



 特定の演出家の先生が何度も回ってくることは、「良い面」と「悪い面」の両方があるのに、今回は主に「悪い面」を取り上げてしまいました。
 それは、「さまざまな演出家の先生の手によって『今の組』の新しい側面を観たいから、出来る限り偏ってほしくない」という個人的な願望があるからだと思います。


 多くても11作、平均的には5作程度が、ひとりのトップスターが大劇場にて回ってくる作品数になります。すなわち、「その組のひとつの時代の作品数」とも言い換えることができます。

 これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれだと思うのですが、限りある宝塚人生、「似た色ではなく、さまざまな色が観たいなあ」と、そう感じたので、今回このようなことを記させていただきました。


 ということで、ひとつの組への演出家の偏りをあまりよろしくは思わないのですが、今回の『うたかたの恋』は再演だからか、「小柳先生の要素が薄め」かつ、「先生が花組生の活かし方ひとりひとりを熟知してきている」とも感じられ、演出家が被ることは悪いことばかりではないんだよなあ〜と、「良い面」もきちんと感じとれました。



 いろいろ記しましたが、とにかく短いタカラジェンヌ人生。ジェンヌさんたちが(この作品に当たって良かった)と。さまざまな演出家に当たることにより、そう思えるような作品に出会わせてあげたいな、と。いちファンとしてそんなことを思いました。



 そして最後に。昨年末憤りを感じた演出家のハラスメント事件。
 あんな事件、もう2度と起きほしくないので、どうか2023年、ジェンヌさんたちが稽古をしやすい環境が今まで以上に整えられますことを、宝塚に携わる方々が仕事をしやすい空間がつくられますことを心の底より願っています。



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