ワッフルと宝塚のブログ

宝塚がある世界に乾杯

【月組】千海華蘭さんという男役さんに思いを馳せる

 本日、スカステのタカラヅカニュース内にて、月組 宝塚大劇場公演 『応天の門』稽古場レポートがありました。


 今回のお芝居の内容や役柄、舞台の雰囲気について語ってくださるのですが、司会に春海ゆうさん。

 ゲストは106期の一乃凛さんと、本公演で退団される千海華蘭さんのお二人でした。


 千海さんは清和帝として13歳の役を、一乃さんは主人公道真の幼少期である阿呼として4歳の役を担います。


 「今日は平均年齢低めです」と、明るく紹介があった後に、しっかり者の千海さんと一乃さんが今回のお芝居についてさまざまなお話をしてくださいました。


 思っていたよりも歌が多そうで嬉しかったり、アグレッシブな平安貴族たちを垣間見れるのかな、とソワソワしているのですが、まるで宝塚のオリジナル脚本のような出来栄えと聞いて、「宝塚にぴったりな応天の門になっているんだろうな」と感じ、俄然楽しみが増し増しになりました。


 そして、千海さんがしっかりと、「原作ファンの方々にこんなの清和帝じゃないと思われないように頑張る。何か気づいた点があればすぐに教えてください」というニュアンスのお話をされていて、月組の皆様の原作リスペクト精神が本当に大好きだと朝から嬉しくなりました。



 今回の稽古場レポートにて、千海さんがとても清々しく、爽やかで、それでいていつも通り明るくて、退団公演のお稽古がとても楽しそうなことが伝わってきました。



 本当に退団されるんだなあ……と。まだ実感は持てないのですが、長らく月組公演にて素敵な思い出をたくさんくださった千海さんについて、本日は少しばかり記したいと思います。



 まずはじめに、千海さんは92期の男役さんで、宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』にて初舞台を踏んでいます。


 千海さんと言えば、長身ではないことに加え、今回13歳の役を演じるのにも納得がいってしまうほど、「いつまでも下級生のように可愛らしい顔立ちをしている男役さん」という印象が一番強いかな、と感じます。

 しかしながらダンスに歌に芝居に、どれをとってもその実力は下級生の頃から光り輝くように素晴らしく、上級生になった今、たくさんの重要な場面を任される頼もしすぎる男役さんです。


 月組に配属されてからずっと、月組男役を全うし続けてきた千海さんは、個性豊かな月組上級生の中のひとりとして、誰とも被らない唯一無二の輝きを存分に放ち続けてくださっています。



 例えば、『月雲の皇子』のアミルや、 『チェ・ゲバラ』のエル・パトホ。『ダルレークの恋』のチャンドラなどなど、千海さんが演じたからこそ大好きな役柄が星の数ほどあります。


 その中でも、個人的には特に、2018年月組エリザベート』の「ラウシャー大司教役」の千海さんが大好きです。


 というのも、ラウシャー大司教は、エリザベートの中で少しだけコミカルに笑いを誘う部分があるのですが、これが歴代のラウシャー教の中でも群を抜いて「ナチュラルに上手い」のです。

 不自然ではなく、自然に、面白い。やりすぎない面白さを心得ていると言いますか、大袈裟にすればいいものではないというお手本と言いますか。もう本当にお芝居が素晴らしすぎるわけでございます。


 役柄をチャーミングに魅せてしまえるとっておきの男役。千海さん以上にこのフレーズが似合う男役さんはいないのではないかと感じます。容貌だけでなく声や素振りなど、他の人では出来ないほどその役をとても魅力的に演じてくださいます。


 『桜嵐記』でのジンベエ役なんて、千海さんが演じるからこそ「武士になりたい男」がとてもチャーミングに見えて、その善人で愛嬌のある姿にとても好感が持てました。そして、だからこそ、珠城さん演じる楠木正行役を慕って、最後は大粒の涙を誰よりも流すシーンに、ますます胸が熱くなりました。

 そこから時が経てからの、年老いてからの演技もそれはそれは名演技で、「難しい役どころは、そして美味しい役どころは千海さんに任せよう」という意向になるのも本当に頷けるほど、観客を引き込むキャラクターをモノにする力が素晴らしいと感じます。



 今回の退団発表を受けて、千海さんの退団に悲しんでいる方々がたくさんいらっしゃいました。

 わたしも同じ気持ちでとても寂しくてたまらないのですが、それと同時に、こんなにもたくさんの人にとって千海さんが「退団を寂しいと感じてもらえる男役さん」になってくださったことが嬉しくもありました。


 というのも、千海さんは新人公演の主演を果たしてはいません。それゆえに、下級生の頃は特に、大劇場での役付きが良いというわけではありませんでした。劇団から推されることもありませんでした。

 ですが、数少ないセリフや出番を自分のものにして、誰とも被らない個性を磨き続けながら、月組の舞台に真摯に向き合ってくださった千海さん。


 数少ない出番の中でも実力を磨き続けていた千海さんは、上級生になるにつれ出番も増え、そして、その出番に見合うだけの実力をいつも月組の舞台で発揮してくださり、わたしたちの心を掴んで離さない男役さんでした。


 その結果、「月組の舞台になくてはならない男役」となり、退団をこんなにもたくさんの方々から惜しまれる存在になったこと、本当に素晴らしくて、じんわりと心があたたまるような、感慨深いものを感じずにはいられません。


 退団がとても寂しくはあるのですが、今までの全公演に全力を注いでくださっていたことも知っています。やり切ったと感じたタイミングがたくさんあっただろうことも察しています。それでもここまでタカラジェンヌでいてくださったこと、月組の男役に人生を捧げてくださったこと、素敵なお芝居を歌をダンスを魅せ続けてくださったこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。



 大好きな大好きな千海さん最後の舞台となる『応天の門』および『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』にて、歌でもダンスでも芝居でもご活躍されますことを期待しています。

 そして、大千秋楽のその日まで、とにかく怪我なく病なく、たくさんの方々が千海さんという唯一無二の男役さんの姿を観ることが出来ますように。


 大好きな千海さんが宝塚人生最後のその日まで悔いなく舞台に立ち続けられますことを心の底より願っています。



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